2016年01月23日

資生堂インターナショナル ヴォカリーズ(香水)

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気づいたらもう10年近く前のことになる。

「ヴォカリーズ」という香水に出会ったのは、当時住んでいた家の近くの、薬局でもないドラッグストアでもない「ファーマシー」と呼ぶのにふさわしいお店。

処方箋、市販薬、健康食品、化粧品…こうして書いてみるとドラッグストアと同じラインナップだけど、置いてあるものはチェーン経営のお店のものとは少し違い、こだわりの商品が多かったように思う。

激安の商品があるわけではないからか、そこはものすごく繁盛しているわけではなく、かといって全然お客がいないわけでもなく…そのあたりの住人のためのお店だったように思う。

デパートコスメだと少し敷居が高かったり販売員がうるさかったりするので、わたしはフラっとそこへ行ってはあれこれ物色するのが好きだった。

資生堂の商品もたくさん置いてあり、当時資生堂が20代女性向けに販売していたピエヌの商品はここでたくさん買った覚えがある。

そこに資生堂インターナショナルのフレグランスコーナーがあった。

ヴォカリーズ、ZEN、名前は忘れてしまったけれど、あともう一種類。

当時は香水なんてロクに買ったことも付けたこともなく、むしろ「くさいな」くらいにしか思っていなかったので、シュッとひと拭きした瞬間に調香師の世界観が広がるという現象があることに驚いた。

ヴォカリーズは、私の日常にはない世界があった。

パウダリー。
重厚。
甘いけれど、「甘ったるい」とは少し違う。
秋〜冬の、キリっと冷たい空気の中をしなやかに歩く毛皮をまとったハイヒールの女性。
都会的で少しクール、だけどまるでウイスキーのような熟成した印象。


…香水の表現は難しい。

今思えば、これを纏うなんて10年早かった。
当時は自分が若いなんて知らなかったけれど、くすみやシミなど無いハリのある肌、艶のある髪、生命力…それを持っている女性には似合わないと今では思う。
香水の使い方も知らず、ただやみくもに纏っていた。

今になってふとこの存在を思い出し、足首にそっと潜ませると、不意に立ち上る香り…嗚呼、やっとこの香水に追いつけた気がする。
これほど「香水」に相応しい一品はなかなかないように感じる。

今はもう、購入することが困難な一品。
これを売っていたファーマシーも今はもうないと聞く。

残り少なくなってその輝きを思い出し惜しむ気持ちが湧き起こる。
「あって当然」だったものが素晴らしかったということにはいつも後から気づく。



ジャックキャバリエ氏による調香。
posted by 黒橡 at 00:00| 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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